緑茶を積極的に飲むようになってから、焼き物を少しずつ揃えている。ありがたい事に、コロナ禍で職を失う事は当面なさそうだ。働く鬱憤を以前はレストラン通いで晴らしていたが、今は情熱を焼き物に移してしのいでいる。
そんなわけで、会社の給湯室内のマグカップ置き場が拡張されたおり、うきうきと新しい焼き物を購入した。注文したのは民芸の里、湯町窯のマグ。紺色の海鼠釉(…解説しろって言われても分からないけど)がとろりと掛かった、厭きの来ない一品である。身バレが怖いから写真はあげないけど、イメージはリンク先でご確認下さい。
湯町窯 - 民藝のある暮し「手しごと」 (teshigoto.shop)
届いてみれば写真より遥かに良い塩梅。卓上カレンダーの脇に置いてあるだけで、絵になる。給湯室で実に楽しくお湯を足していた所、気立ての良い先輩から話し掛けられた。
「あ、このマグカップ、にゃじるしさんのだったんだ」
「そうなんですよ!会社でお茶飲みたくて、持ってきちゃいました」
次に先輩から飛び出してきた言葉は、悪気がない分なかなか真理をついていた。
「渋いよね。うん、めっちゃ渋い」
そして、とどめの一撃。
「おじさんのかと思ってた」
…おじさんのかと、思ってた(エコー)。
そうか…成程…勤め人生活が長かった結果、精神まで男性化してしまったのか、私は。
思い当たることが無いわけではない。何がどう、という訳ではないが、気をつけなければ。
一瞬妙な納得をした後、はっとした。
あれ、そもそも、当社の男性の先輩方、別に焼き物使ってないな、と。
つまり、世間的に、焼き物趣味=年配の男性、というイメージがある、って事で。
特に、渋い民芸品は、『時代おくれ』みたいな烙印を押されがち、という事では。
…勿体ない。こんなに格好いいのにね。
民芸の歴史が色濃く残る、湯町窯。ぱっと見ただけでは分かりにくいものの、実はこの海鼠って奴、じわっとしたミルク地に紺色の点描なんですよ。釉薬のかけ方の具合が絶妙で、紺色が細胞のように動きそうな所が大好き。無機質なオフィスの中で仕事していると自分まで無になりがちだけれど、こいつがぽんと机の上に置いてあるだけで程よく和む。口当たりがめちゃめちゃ良くて、持ちやすくて、断然お茶が美味しい。
そういえば、給湯器には会社の方々が持ってきた色とりどりのプリントマグカップが並んでいるものの、良く考えれば焼き物は一つも無い。インテリアショップにも、民芸品は並んでいない。いつの間にか都会人には焼き物は縁遠くなってるな、と改めて寂しく思った。
何というか、確かに生活する暇もないもんなぁ。
後日談。
以上の行程を説明した上で湯町窯の焼き物をはりねずみさんにジャッジして貰った所、『よい感じだが、にゃじるしは焼き物好きの中でも渋いのチョイスしてくるよね』と、長年の友人ならではの感想を頂きました。どちらかというと『男性』というより『おじいちゃん』より、との事。
…まあ、現世に磨かれて悟りの境地に至りつつある、という事にしておこ。
コメント
コメントを投稿