九州出身の両親は東京暮らしに余裕が無かったせいか、つい三月前までお茶はざっくり三種類しか知らなかった。都内のその辺のスーパーで売っている、静岡の緑茶。実家に帰った両親が買ってくる、やや甘い八女茶。それから、デパートで売っている、ご進物用の宇治茶(これは、差し上げるだけなので味は良く知らない)。
以上。
思えば自分、残念な日本人である。
流石にいい大人なので、狭山茶、嬉野茶、掛川茶、知覧茶と、多少産地の名前は知っている。でも、それぞれの産地で何が違うか、実際どんな味か、まるで勘が働かない。何回か前のブログの通り、品種に関する知識はもっと壊滅的である。
このままではいけない、と反省して取り寄せた緑茶が、滋賀は朝宮茶・政所茶の中川誠盛堂だ。ここのかりがね茶(茎茶)を飲んで、日野荒茶に続き『ちょっと、滋賀のお茶、美味しすぎるわ』と呻く羽目になった。
ただの茎茶と侮るなかれ。急須に移すと、葉の緑と茎の黄緑のコントラストにはっとする。そのまま着物に使えそうないい色合いが目に嬉しい。
さっと淹れるとこれまた極上。黒豆、天津甘栗、針しょうが、ローリエ。芋焼酎ともみじの葉が水に濡れたような香り。説明書きよりほんの一拍だけ短めの方がしゃきっと出る気がする。滋賀の水で淹れるともっと美味しいのだろうな、と目を細めながら飲んだ。
今気付きましたがパッケージ右下の金色は琵琶湖ですね(はりねずみ)
…ホントだ(にゃじるし)
茎茶というと庶民向けに雑味のある緑茶のイメージがついていたが、この中川誠盛堂の特上かりがねに限っては、そんじょそこらの緑茶は到底叶わない美味しさである。滋賀県の方、どうして早く教えてくれなかったんだ…それは多分、このレベルのお茶が現地だと当たり前だからなんだろうな。そう考えると、実に羨ましくてならなくなった。
いやだって、本当に美味しいですよこれ。
日々の生活の節目がきりっとして、お茶のある生活ってこれか、と嬉しい気持ちになる、いい案配のお茶なのだ。
口に入った時のまろやかさが嬉しい。
(最中にも合う。)
少し調べてみれば滋賀県のお茶作りの歴史は、古く奈良時代まで遡るという。室町時代には朝宮茶や政所茶としてブランド化され、中川誠盛堂が設立した江戸時代には、武士や寺への献上品の定番であったようだ。よく考えなくても、こういう歴史あるお茶所の緑茶が美味しくないわけがない。
少し気付くのが遅かった事は悔やまれるけれど、しっかりした滋味とキレのある緑茶に巡り会えて嬉しい。ご馳走様です。又財布が許す限り、一通り注文したいです。でも、次に何か購入しようかとサイトを見ていても、どの緑茶も全部美味しそうで、目移りして困る。
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