共働きの両親の下で育った友人の家には、少し前まで急須が無かったそうだ。近くのお茶屋さん曰く、急須がない家はかなり増えているらしい。かく言う私も、ブログを始めようと常滑焼の急須を購入するまで、緑茶からは遠ざかっていた。
だってね。ここ三年、引き出物でもらった急須を使ってたんですが、ああいう急須の蓋ってぴったり合ってなくて、隙あらばお茶淹れている時に湯呑みにダイブするんですよ。奴ら、何なら湯呑みにジャストフィットするじゃないですか。あの、残念すぎる一瞬。
このような可愛い急須を手に入れよう。#森山窯さん
煎じ詰めれば、そういう手間を尽くしても飲みたいような美味しい緑茶や、少し良い急須を調べる気力が、私には無かった。働きずくめの毎日を送っている方は、どなたもそんなものではないかと思う。
そんな私でも、急須が一つあれば、一息つきやすい。今日はそれを実感させてくれたお茶の話。
ブログを始めるに辺り、折角なら少し変わったお茶も頼んでみよう、と、足久保ティーワークスの『かなやみどり 骨茶』というお茶を購入した。かなやみどり、というのは一般的にミルキーな緑茶を生み出す種で、これは抹茶の材料になるように育てたお茶の茎だそう。
これが絶妙に緑茶のイメージから外れたお茶で、興味深く頂いた。
マンゴー、アスパラガス、菩提樹、少し山椒、ほんのり和三盆。何かと一緒に合わせるより、お茶単品でゆっくり飲むのがお勧め。食い道楽の夫がえらく気に入ってしまい、もう一度購入しろとせがむほど。同時期に購入した『薫風』というブレンドらしきお茶が王道のおいしさならば、こちらは個性的だが癖になる味わいである。
そして、このお茶は、美味しく淹れるのには技術がいるな、と唸らされるお茶であった。
個人的に少し濃く淹れる方が好みだったのだが、長く待ちすぎてしまうとどこか間延びした味になる。ならば、と茎の量を多くすると、今度はややくどい。お湯の温度が少し低すぎると拗ねたように味を出さないし、高い温度にするとセロリのような青臭さがわさわさと出てきて、折角の風味を邪魔する。フランスワインばりのかまってちゃんである。悪戦苦闘している内に飲み終わってしまった。
この七転八倒が、意外と楽しかったのだ。
思ったより、手間が嫌で無かった、というか。
美味しいお茶を飲むために、謂わば、自分のために、手間を掛けているな、という実感があったので。
お茶を淹れるのも物づくりだな、と思った。
図画工作の時間で、触ったことのない素材を前にわくわくしているあの気持ちが、「かなやみどり 骨茶」には確かにあった。これを読んでいらっしゃる急須をお持ちの方、是非お試しを。あ、でも出来ればどこかでもう一回買いたいから、私の分も残して置いてくれると…。
ひたすら優しい甘さ。抹茶を作る過程で生まれる「くき茶」=「骨」 (ashikuboteaworks.com)
ペットボトルのお茶を成城石井で購入するのはお手軽で美味しいけれど、お茶を淹れる手間など、せいぜい10分。しかも、高級スーパーのペットボトルより、茶葉を購入するよりはるかに安価だ。少しだけ面倒でも、急須を使ってお茶を飲んで一息つく時間は、結構いい気分転換になる。
手間を掛けた分だけ返ってくる事は、社会人になるとなかなかないこともあり。
追伸:お茶汲みに七転八倒したくない方は、文中のブレンド緑茶『薫風』も良さそうです。特にコツいらずに適当にいれても軽くさわやかに飲めて、気分転換の一服に最適でした。
一庶民の常用には少しだけ予算外ですが、『他の出費を削ってお茶飲もうかしら』とちらっと考える位には美味しかったです。ご馳走様でした。
浅蒸し茶 薫風(リーフ100g入)| 静岡茶発祥の地 足久保ティーワークス (ashikuboteaworks.coこm)
親しみやすい薫風。これすき
コメント
コメントを投稿